保湿剤は必要?
下記の間違いが多いのでご注意ください。
- 湿疹(ぶつぶつ)があるのに保湿剤だけで乗りきろうとする。
- →無理。すでに火事が起こっているのに予防対策するようなもの。
- プロペト(ワセリン)をお風呂から出てすぐに塗る。
- →汗が出にくくなり、逆にかゆくなる。
- プロペト(ワセリン)を朝、顔に塗って外出する。
- →黒くなる。サンオイルと同じ。
塗り薬はかゆみがなくなれば塗らない方がよい?
かゆい時だけに薬を塗るのでは、湿疹はいつが来ても良くなりません。胃潰瘍の薬を胃が痛い時だけに飲むのと同じです。
触ったお肌の感触が周辺の正常な皮膚と同じになるまで、塗ってください。皮膚の硬さやブツブツが指先に感じられる間はまだ治っていません。
ステロイドを塗ると黒くなる?
大間違いです。
ステロイドそのものではなく、ステロイドを溶かしているベースの軟膏(ワセリン)が問題です。ワセリン(プロペタも)は紫外線を通しやすいため、塗って長時間日光に当たると黒くなります。クリームであればその様な心配はありません。
逆に、炎症が長引くと、いっそう色素沈着が起きやすくなります。炎症が長引くと、表皮のメラニンが真皮に落ち込んで黒くなる訳です。膝下を両方同じくらい虫に刺された場合に、片方はステロイドを塗って、反対側は塗らなかった場合、明らかにステロイドを塗っていない側が黒いと言う実験結果があります。すなわち、ステロイドで早く治したほうが色素沈着は少ないです。
なお、赤みの強い病変の場合、ステロイドを塗って皮膚が黒くなったように見えることがあります。 。でもそれは、ステロイドを塗って赤みが消えたために、赤みによって隠されていた色素沈着が表に現れただけです。試しに赤みが強い部分の皮膚を指先で左右に引っ張って赤みを目立たなくすると、すでに黒くなっていることが分かります。
ステロイドは怖い薬!?
ステロイドの飲み薬は確かに怖いです。感染病になりやすくなる・糖尿病や高血圧の悪化・骨粗しょう症の促進などいろいろな副作用があります。しかし、膠原病では必要な薬であり、自己判断で中止することは極めて危険です。車が危険な乗り物だと聞いて、走っている車から飛び降りるのと同じです。医師の指導に基づいた減量や増量が必要です。
ステロイドの塗り薬には強いものから弱いものまで大きな幅があります。代表的な塗り薬リンデロンVGを360位の強さとしたら、5~2000位の強さの幅があります。強さ2000のものを毎日10本以上塗っていると、上記と同様の副作用が出てくる可能性があります。通常、皮膚科専門医が処方している限り、その様な無茶な処方はないと思います。ちなみに、わたしの大学時代の最初の教授はステロイドの副作用が専門でした。
結論:ステロイドの塗り薬で内臓への影響は心配ありません。しかし、塗っている場所(皮膚)には副作用が出る可能性があります。
まずかゆみを止める!
まず、かゆみを止めることが第一です。そのためには塗り薬ではなく、飲む薬(抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤)が合理的です。塗る薬はなってしまった皮膚炎(さわってわかるブツブツや皮膚の硬さ)を治すだけです。
かゆみ止めの飲み薬は効果の強いものほど眠くなり易いです。ただし、感受性には個人差が大きいです。一般的に風邪薬や花粉症の薬を飲んで眠くなる方は、眠気のこない弱めのお薬でも十分効きます。
妊娠中でも飲める安全性の高いものもあります。その方の状態やご希望に応じて、どの薬が良いか提案致します。
1週間内服しても、かゆみが楽にならない薬は変更するのが基本です。
病名でなく原因を探す!
アトピー性皮膚炎と診断した途端、母親の多くは食事アレルギーを心配し、一部の医師は原因を考える努力をしなくなります。
一般的にアレルギーの原因と言うと血液検査のことを言われる医師や患者さんが多いですが、血液検査の結果と皮膚症状が合わないことが多いので本院ではあまり信じすぎない様に説明しています。
例:肘膝のかゆみを伴ったブツブツ(専門用語では丘疹)のある患者さんで、血液検査で卵アレルギー陽性は無関係です。卵アレルギーはかゆみを伴った大きな赤み(じんましん型反応、専門的にはⅠ型アレルギー)です。かゆみを伴ったブツブツは湿疹型反応、専門的にはⅣ型アレルギー)です。肘膝のかゆみを伴ったブツブツは発汗、特に汗の中のニッケルやコバルト(チョコレートに多く含まれる)に対するⅣ型アレルギーです。
血液検査の結果と症状の出ている場所や皮膚の状態を合わせて総合的に判断する必要があります。血液検査で陽性でも関係の無い場合、逆に陰性でも原因であることはとっても多いです。
なんでもかんでもアトピー性皮膚炎?
日本の診察時間の医師たちにアトピー性皮膚炎と診断された患者さんの写真を欧米の皮膚科専門医の友人たちに見せると、その90%以上はアトピー性皮膚炎以外の診断名がつきます。その理由は欧米ではアトピー性皮膚炎の診断基準は極めて厳格で、日本の診断基準が緩すぎるためです。
病気にはすべて原因があります。「アトピー性皮膚炎」の原因として、食事、ストレス、ホコリ・ダニアレルギーなどいろいろなことが言われています。それぞれの原因とそれに対する対処方法は一部の方には有効でも、他の方には無効です。
日本では、多くの異なる原因で発生する皮膚の病気を、すべて「アトピー性皮膚炎」と言う大きな箱にほり込んでいるのです。例えば、セキのでる病気をすべて「セキ出る病」と診断して治療する様なものです。風邪も、喘息も、結核も、肺癌もすべて「セキ出る病」とする様なものです。日本でアトピー性皮膚炎と診断されているものは、欧米では20人に1人位しかアトピー性皮膚炎とは診断されません。日本はアトピー性皮膚炎の大安売りです。
当院では、アトピー性皮膚炎と言う病名はできるだけ使わず、それぞれの状態や生活スタイルを詳しく観察し、できるだけ原因を探す努力をしています。原因が分かればそれに対する対処方法を説明致します。
よく「アトピー性皮膚炎」と診断されているもの
- 食直後にかゆみ、それから蕁麻疹型の大きな赤いはれ
- →食事アレルギー
- 夕方から夜間のかゆみ
- →ストレスで起こる心因性のかゆみ
- 冬場の膝下のかゆみ
- →乾燥肌に対する刺激(ジャージ・フリース・風呂の塩素濃度)
- 赤ちゃんの顔の赤み
- →よだれや母親の着ているフリースの刺激で発生する皮膚炎
- 季節性の顔のかゆみ
- →スギ・マツ・雑草などの花粉
- 肘膝・手の水疱
- →ニッケル・コバルトなどの金属アレルギー。(歯科用金属やチョコレートに含まれる。血中レベルが高くなると、汗と一緒に排出される。肘膝・手などの汗の溜まりやすい場所に好発。)